Indemnity/Indemnification条項(保証条項)の意味を考える
契約の相手方の被る損害の補償を規定するものの、英文契約におけるIndemnity/Indemnification条項は和文契約書の損害賠償責任規定とは全く異なるものと捉えるべきです。
日本の典型的な損害賠償責任規定は民法上の債務不履行責任或いは不法行為責任と同質の内容を持っており、これら法令上の責任を拡張するものではありません;個別契約に損害賠償責任規定が欠けていたとしても、一般法たる民法に基づいてほぼ同じ責任が発生する為、同じ結果が期待されるといっても過言ではないでしょう。
その一方で、Indemnity条項は「Risk/危険の配分」を目的にした契約上特別の義務・責任の規定をするものと考えるべきです (英米法にも「Breach of Contract」や「Torts」といった帰責性を要件とする責任規定が別個に存在しますが、Indemnity条項はこれらとは別の機能・目的を有する特別な責任を定めるものです)。
1.帰責性を拠り所にした取り扱いに馴染まない
Indemnity条項は「危険の配分」を目的としており、当事者に生じた損害・損失等を契約当事者のどちらが負担するかを定めるもので、義務違反といった「帰責性」を必ずしも前提にしていません;文言上、契約当事者の帰責性に触れていない場合には、帰責性の有無にかかわらず補償責任を問われることになる可能性があるということです。日本の損害賠償義務規定と違い、明確な文言の不在の場合にも帰責性が要件として「読み込まれる」のではないことに注意が必要です。
2.契約の相手方以外の者の損害も対象となる
Indemnity条項においては、契約の相手方以外の第三者に発生した損害も補償の対象になり得ます;日本の損害賠償責任においては、相手方が第三者の請求に応じて支払いをすることで、第三者への損害が契約の相手方自身のそれとなった時点で初めて契約当事者の賠償責任の問題になるのが違いです。
3.第三者からの請求・訴訟も対象になる
Indemnity条項では、契約の相手方が第三者から請求を受けた時に、当該請求につき直接対応する責任が発生し得ます;日本の損害賠償責任規定はあくまで当事者間の紛争についてのもので、契約当事者は相手方に損害が発生した場合に金銭補償するものの、相手方が第三者に訴えられた際に何らかの対応をする契約上の義務はありません。
一般的なIndemnity条項のレビューの際の留意点
「Indemnify」、「hold harmless」や「defend」といった語句の使用から、以下の条項が「Indemnity条項/補償条項」である事は容易に見分けがつきます。
7.1 General Indemnification.
Party (the “Indemnitor”) shall indemnify, hold harmless and defend the other PARTY, its Group and their respective, directors, officers, employees. agents customers, suppliers and representatives (the “Indemnitee”) from and against any and all claims and demands, damages, losses, liabilities, costs, expenses and reasonable attorneys’ fees due to, arising out of, caused by or in connection with the performance of this Agreement, regardless of negligence of the Indemnitee.
7.1 一般補償規定
当事者(以下「補償責任者」とする)は、他方当事者、そのグループ、並びに、これらの取締役、役員、顧客、供給業者及び代表者(以下「補償対象者」)に対して補償対象者の過失の有無にかかわらず、本契約の履行を理由として、起因して、原因として或いは関連して発生した、請求、要求、損害、損失、責任、経費、費用及び合理的な弁護士費用について、補償し、保護し、防御する。
先ず、上の例文において色別された、規定自体の構成要素である⓵補償行為、⓶補償対象者、⓷補償対象損害、⓸関連性・因果性が其々適切に設定されているのかを確認し、次いで⓹補償責任の限定等の付属的な規定及び⓺第三者請求に関する手続き規定の確認を行います。
(1)補償行為
米国各州において様々な判例や意見が存在しますが、一般的には「Indemnify」と「hold harmless」は同意で「defend」は異なる法的意味を有するとされています。Indemnity条項の規定のされ方によるものの、「defend」の方が、補償対象者に対する第三者からの訴訟提起があった時点で当該訴えの帰趨に拘わらず訴訟費用負担の責任が発生する厳しい責任であると言えましょう。米国での弁護士費用の高さを考慮すれば、慎重な対応が望まれます。
-補償責任を追及される立場(例えば「売主」)にある場合は、以下の様な修正が考えられます。
Party (the “Indemnitor”) shall indemnify, hold harmless and defend the other PARTY, its Group and their respective, directors, officers, employees. agents customers, suppliers and representatives (the “Indemnitee”) from and against any and all claims….
当事者(以下「補償責任者」とする)は、他方当事者、そのグループ、並びに、これらの取締役、役員、顧客、供給業者及び代表者(以下「補償対象者」)に対して…ついて、補償し、保護し、防御する。
更に慎重を期して、以下の様な文言を追加するのも良いでしょう。
Party (the “Indemnitor”) shall indemnify, hold harmless and defend the other PARTY, its Group and their respective, directors, officers, employees. agents customers, suppliers and representatives (the “Indemnitee”) from and against any and all claims…The parties agree that this indemnity provision does not include any obligation or duty to defend any claims, demands, cause of action, lawsuit or proceeding due to arising out of, caused by or in connection with….
当事者(以下「補償責任者」とする)は、他方当事者、そのグループ、並びに、これらの取締役、役員、顧客、供給業者及び代表者(以下「補償対象者」)に対して…ついて、補償し、保護し、防御する。両当事者は、本補償条項が、…を理由とし、起因し、原因として或いは関連する請求、要求、訴え、訴訟或いは手続きに関してこれを防御し引き受ける義務を含まない事について、同意する。
一方、補償責任を追及する側にある場合は、特段の修正はいらないでしょう。
(2)補償対象者
Indemnity条項は、一般的な損害賠償条項と異なり、「危険の配分」を目的にしている為、補償対象者として相手方当事者に加えてその関係者も列挙されることが多くなります。
そこに誰を含めるべきかを当該契約の取引内容や相手方との関係を考慮して決める事になりますが、想定外の保証を求められるリスクを抑える為には、原則として契約の相手方の他には、そのグループ及び役員、従業員といった社内関係者迄に限定すべきでしょう。それ以外の第三者は削除すべきです。
-補償責任を追及される立場(例えば「売主」)にある場合は、以下の様な修正が望まれます。
Party (the “Indemnitor”) shall indemnify, hold harmless and defend the other PARTY, its Group and their respective, directors, officers, and employees, agents customers, suppliers and representatives (the “Indemnitee”) from and against any and all claims…
当事者(以下「補償責任者」とする)は、他方当事者、そのグループ、並びに、これらの取締役、役員、及び従業員、代理人、顧客、供給業者及び代表者(以下「補償対象者」)に対して…
(3)補償対象損害の範囲
-補償責任を追及される立場(例えば「売主」)にある場合は、以下の様な修正が望まれます。
…from and against any and all claims and demands, damages, losses, liabilities, costs, expenses and reasonable attorneys’ fees due to, arising out of, caused by or in connection with the performance of this Agreement, regardless of negligence of the Indemnitee, provided, however, that the Indemnitor shall not be liable for special, punitive, consequential, incidental or indirect damages, lost profit or business opportunity and internal administrative and overhead costs.
…当事者(以下「補償責任者」とする)は、他方当事者、そのグループ、並びに、これらの取締役、役員、顧客、供給業者及び代表者(以下「補償対象者」)に対して補償対象者の過失の有無にかかわらず、本契約の履行を理由として、起因して、原因として或いは関連して発生した、請求、要求、損害、損失、責任、経費、費用及び合理的な弁護士費用について、補償し、保護し、防御する。但し、補償責任者は、特別、懲罰的、結果、偶発的或いは間接的損害、利益損失或いは機会損失、内部的事務コストや人件費に関しては責任を負わないものとする。
-補償責任を追及する側にある場合は、敢えて「damages」の範囲を限定する必要は有りませんが、以下の様な加筆が考えられます。一般的に、補償対象と想定されるのは実際に提訴された訴訟に関連する費用だけなので、和解で支払われる額や費用も含む事を明確にしておきたいなら:
…from and against any and all claims and demands, settlement (including any payment funding and other expenditure in settlement), damages, losses, liabilities, costs, expenses and reasonable attorneys’ fees due to, arising out of, caused by or in connection with the performance of this Agreement, regardless of negligence of the Indemnitee.
…補償対象者の過失の有無にかかわらず、本契約の履行を理由として、起因して、原因として或いは関連して発生した、請求、要求、損害、損失、責任、経費、費用及び合理的な弁護士費用について、補償し、保護し、防御する。
又、裁判外の請求や、政府による調査・捜査といった行政手続が補償の対象外とされない為に:
…from and against any and all Claimsclaims and demands, and damages, losses, liabilities, costs, expenses and reasonable attorneys’ fees due to, arising out of, caused by or in connection with the performance of this Agreement, regardless of negligence of the Indemnitee. “Claims” shall mean all claims, requests, allegations, assertions, complaints, petitions, demands, actions, litigations, proceedings, governmental inquiries and investigations of any nature, and cause of action of any kind and description, including but not limited to any and all claims arising, in whole or in part, in tort, contract, statute, equity or strict liability.
…補償対象者の過失の有無にかかわらず、本契約の履行を理由として、起因して、原因として或いは関連して発生した、本請求、要求、損害、損失、責任、経費、費用及び合理的な弁護士費用について、補償し、保護し、防御する。「本請求」とは、全ての請求、要請、申立て,主張、上申、請願、要求、法的措置、訴訟、手続き、その根拠を問わず政府による全ての質問及び調査、全ての種類及び性質の法的措置を言い、これには不法行為法、契約法、成文法、衡平法及び厳格責任にその全部又は一部を根拠とする全ての請求を含むが、これに限らない。
(4)因果性
…caused by, due to, arising out of or in connection with the performance of this Agreement…
…本契約の履行を原因として、起因して、原因として或いは関連して発生した…
a)因果性の程度
米国の判例等では、「arising out of」に要求される因果性が他の二つに比べて緩く、補償対象拡大のリスク最小化する為には出来るだけ避けるべきでしょう。
b)原因事実
自身に帰責性が認められるべき様な要件事実を明確に規定しておけば「不透明な」リスクを最小化できるでしょう。以下の様な記載を加えることが考えられます。
・過失行為等を記載する
…due to…any negligent act or omission by the Indemnitor…
(補償責任者の過失に因る行為乃至不作為を原因として)
・契約義務違反行為を記載する
…due to…breach or violation by the Indemnitor of its obligation under this Agreement…
(補償責任者の本契約における義務違反を原因として)
・法令違反行為を記載する
…due to…any violation of the applicable laws by the Indemnitor…
(補償責任者による法令違反を原因として)
・自分が供給する製品の瑕疵を記載する
…due to any defects in the Product supplied by the Seller under this Agreement…
(売主が本契約に基づき供給した製品の瑕疵を原因として)
-補償責任を追及される立場(例えば「売主」)にある場合は、以下の様な修正が望まれます。
…with breach or violation of the Indemnitor of its obligation under the performance of this Agreement, regardless of negligence of the Indemnitee.
…補償対象者の過失の有無にかかわらず、補償責任者の本契約における義務違反本契約の履行を理由として…
(5)責任の限定
1.責任限定規定の効果
7.2 Limitation on Liability.
DESPITE ANYTHING ELSE IN THIS AGREEMENT, IN NO EVENT WILL EITHER PARTY BE LIABLE TO THE OTHER PARTY UNDER ANY THEORY OF TORT (INCLUDING NEGLIGENCE), CONTRACT, STRICT LIABILITY OR OTHER LEGAL THEORY FOR PUNITIVE, SPECIAL, INCIDENTAL, INDIRECT OR CONSEQUENTIAL DAMAGES OR LOST PROFITS, LOST REVENUES, LOST BUSINESS OPPORTUNITIES, OR LOST GOODWILL, IF THESES DAMAGES ARISE OUT OF OR IN RELATION TO THIS AGREEMENT. EACH OF THESE DAMAGES IS EXCLUDED BY THIS AGREEMENT, REGARDLESS OF WHETHER THE DAMAGES WERE FORESEEABLE OR WHETHER ANY PARTY OR ANY PERSON HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY OF THE DAMAGES.
7.2 責任の限定
本契約における別段の規定にかかわらず、いずれの当事者も相手方当事者に対して、不法行為法(過失による不法行為を含む)、契約法、厳格責任又はその他の法的根拠に基づき、本契約に起因又は関連して、懲罰的損害、特別損害、偶発的損害、間接的損害又は結果的損害、逸失利益、逸失収益、業務上の機会損失、又は信用損失/営業権の毀損等の損害が発生したとしても、これらに関して一切の責任を負わないものとする。これらの損害に対する責任はいずれも、それらの損害が予見可能であったか否か、又はいずれの当事者や人員が損害の可能性について知らされていたか否かを問わず、本契約により除外される。
責任限定規定は重要な効果を有する為、全て大文字且つ太字にすることが多いのですが、企業間の契約では通常の書き方でも問題ありません。ただ、重大な過失(gross negligence)による損害や人身損害に関しての責任制限は有効でないと考えられている点には注意が必要です。
では、上記例文においては詳細になされている間接損害の除外はどうでしょうか。
米国でも、補償責任における補償対象は契約時点で予測可能性のあった損害に限定されていますし、賠償責任を多額なものにする最大の理由である懲罰的賠償責任は(意図的或いは重大な過失に因る悪質な違反行為があった場合を除き)通常の取引契約における義務違反には原則適用されません。因って補償に関して責任限定規定のない儘合意するという判断もあり得るわけで、寧ろ間接損害の補償に関しての上限額を契約時に設けるというアプローチも考慮すべきでしょう。
2.下限額の設定
M&A契約等一部の契約においては、逆に補償責任に下限額を設定することがあります。
設定された下限額を超えた場合、①その損害全額(この場合、設定額はFirst Dollar Basket/補償基準額と呼ばれます)を請求できる、或いは②超過額を請求できるとする(設定額はBasket Deductible/控除額と呼ばれる)もの、又複数の補償請求がある場合に①下限額が各請求に個別に適用されるのか、或いは②全請求の合計額に適用される、といった設定方法の選択肢があり得ます。
―補償責任を追及する側にある場合は、下限額を設定する規定を以下の様に修正することが考えられます。
1.1 Indemnitor is not required to indemnify any Indemnitee from any Losses until and unless the amount of all Losses alleged to be arising out from an individual claim exceeds $10,000, in which case Indemnitor shall be required to indemnify only for such amount of the Losses that exceeds $10,000in which case Indemnitor shall be required to indemnify for the aggregate amount of all such Losses, but subject to the section 1.2.
1.2 Indemnifying Party shall not be required to indemnify Indemnitee from any Losses unless and until the aggregate amount of all Losses that would otherwise be indemnified pursuant to this Section 1.1, exceeds $10,000, in which case Indemnifying Party shall be obliged to indemnify Indemnitee only for such Losses exceeding $10,000in which case Indemnitor shall be required to indemnify for the aggregate amount of all Losses.
1.1 補償責任者は、補償対象者に対して、個別の請求から生じていると主張される損害の額が10,000ドルを超えない限り、保証する責任を負わず、各請求額の総額が10,000ドルを超えた場合、10,000ドルを超えた部分についてのみ責任を負うその損害の全額につき補償する責任を負うが、但し、1.2条の制限が適用されるものとする。
1.2 補償責任者は、1.1条で補償対象となる霜害の総額が100,000ドル(以下「控除額」)を超えない限り補償対象者に対して補償する責任を負わないが、100,000ドルを超えた場合、その損害の内控除額を超えた部分についてのみ補償する責任を負うその損害の全額につき補償する責任を負う。
(6)第三者の訴え規定
Indemnity条項の下では、第三者からの補償対象者に対する訴え等も補償の対象になる為、第三者からの訴えなどの「結果」として発生した損害を補償する責任だけでなく対応の仕方について複雑な規定がされていることが多く、その場合には訴えが起こされた時点での対応義務への注意が必要です。原因事実を自身に帰責性がある場合に限定しても、第三者が補償対象者に対して訴えを起こした際に、補償責任者自身の帰責性に関しての「主張」がされていた場合に、手続規定の書かれ方によっては(訴えの結果を待たずして、自身に帰責性があるかの判断がなされる前に)対応を強いられる可能性があります。
典型的な手続規定の内容は以下の様になります。
① 第三者から訴えがあった場合の補償責任者への通知
② 防御責任者の決定手続
③ 弁護士の選任手続
④ 和解手続
⑤ その他(協力義務や義務違反の効果等)
手続規定レビューの際の留意点---第三者による訴えへの対応に関する自身の権利の確認
特に重要なのは、上の②、補償責任者と補償対象者のどちらに防御に関する権利・義務があるか、と④の和解に同意する権利がどのように規定されているかです。
7.3 Indemnification Procedure.
Whenever any claim shall arise out for indemnification under this Section 7:
(a) the Indemnitee shall promptly notify the Indemnitor in writing of the claim and, when known, the facts constituting the basis for such claim; provided, however, that the failure to timely provide such notice shall not release the Indemnitor from its obligations under this Section 7 except to the extent that the Indemnitor is actually prejudiced by such failure. The notice shall specify the amount or an estimate of the amount of the claim (if known or capable of estimation at such time);
(b) in connection with any claim by a third party giving rise to or the commencement of any proceeding that may give rise to indemnity under this Section 7, the Indemnitor may, upon written notice to the Indemnitee, assume the defense of any such third party claim or proceeding, and thereafter conduct the defense thereof at its own expense. If the Indemnitor elects to defend such third party claim or proceeding, the indemnitee shall make available to the Indemnitor or its representatives all records and other materials reasonably required by them for use in contesting such third party claim or proceeding and shall cooperate fully with the Indemnitor in the defense thereof. No Indemnitee will be liable with respect to any compromise or settlement of any third party claims or proceedings effected without its consent;
(c) if the Indemnitor does not assume the defense of such third party claim or proceeding within 30 days after giving notice under Section7.2 (a) or does not thereafter conduct such defense, the Indemnitee may defend against such third party claim or proceeding in such manner as it may deem appropriate.
7.3 補償手続。本条に基づき補償の請求が発生した場合は、
(a) 補償対象者は、補償責任者に対して速やかに、当該請求があった事及び確認できた時点で当該請求を基礎付ける事実に関して書面で連絡する。ただし、これらを速やかに連絡しなかった場合でも、それにより補償責任者の権利が実際に害されるような場合を除き、補償責任者は第7条に基づく義務を逃れない。当該連絡に当たっては当該請求で求める補償額あるいはその見積もりを(分かった時点あるいは見積もりが出来るようになった時点で)記載する。
(b) 本条に基づく補償の対象となり得る第三者による請求や手続きの開始がなされた場合、補償責任者は、補償対象者に書面で通知する事で、自身の負担において、当該請求や手続きに対する防御を引き受けて遂行することができる。補償責任者が第三者の請求や手続きで防御することを選択した場合、補償対象者は補償責任者あるいはその代表者に対して当該請求あるいは手続きで争う上で合理的に必要になると考えられる全ての記録その他の資料を利用可能にし、当該防御において補償責任者に対して充分協力する。補償対象者は、これらの第三者の請求や手続きに関する和解や示談について自身の同意なく行われた場合には一切の責任を負わない。
(c) 補償責任者が第三者による請求や手続きについて7.2条(a)の通知がされてから30日以内にそのような防御をする事を引き受けなかった場合、あるいは、防御を実際に行わなかった場合、補償対象者は当該請求や手続きについて自ら適切と考える方法で防御をする事が出来る。
②に関しては、補償責任者が第三者からの訴えに対する防御を自らの負担で引き受ける権利があるとされることが多く、補償対象者にとって敗訴の場合の金銭的責任負担がない事は望ましいと言えましょうが、後者が自ら防御を担当する権利も確保し、訴訟の帰趨に応じて費用と賠償金を前者に請求するとしておくことも考えられます。殊に日本企業の間では、自らに対して起こされた訴訟を防御できないという選択肢は受け入れ難いとされる場合が少なからずあるでしょう。
④については、実際に防御をしていない当事者に和解に対する同意権があることを確認すべきです。裁判所での訴訟の結果や仲裁人による判断が中立的な第三者により訴えの中で特定された請求の範囲内で形作られるのに対し、和解の場合は当事者の合意により内容が決まる為その結果の予測が難しいからです。
―以上を踏まえて、補償対象者は次のような修正を考慮すべきでしょう。
(b) in connection with any claim by a third party giving rise to or the commencement of any proceeding that may give rise to indemnity under this Section 7, the Indemnitor may, upon written notice to the Indemnitee, assume the defense of any such third party claim or proceeding, and thereafter conduct the defense thereof at its own expense. If the Indemnitor elects to defend such third party claim or proceeding, the indemnitee shall make available to the Indemnitor or its representatives all records and other materials reasonably required by them for use in contesting such third party claim or proceeding and shall cooperate fully with the Indemnitor in the defense thereof. Notwithstanding such election, the Indemnitee may participate in any proceedings with counsel of its choice at it sown expense. No Indemnitee will be liable with respect to any compromise or settlement of any third party claims or proceedings effected without its consent;
(b) 本条に基づく補償の対象となり得る第三者による請求や手続きの開始がなされた場合、補償責任者は、補償対象者に書面で通知する事で、自身の負担において、当該請求や手続きに対する防御を引き受けて遂行することができる。補償責任者が第三者の請求や手続きで防御することを選択した場合、補償対象者は補償責任者あるいはその代表者に対して当該請求あるいは手続きで争う上で合理的に必要になると考えられる全ての記録その他の資料を利用可能にし、当該防御において補償責任者に対して充分協力する。補償責任者による斯かる選択に拘わらず、補償対象者は自身で選んだ弁護士により自身の負担で当該手続に参加することができる。補償対象者は、これらの第三者の請求や手続きに関する和解や示談について自身の同意なく行われた場合には一切の責任を負わない。
又、和解の内容に関して補償対象者にとって懸念されるのは、補償責任者が謝罪広告のような非金銭的義務を行うことに応じ、それが自分の名前を含む形で知らない内に為されてしまう可能性等です。
No Indemnitee will be liable with respect to any compromise or settlement of any third party claims or proceedings effected that includes any obligations of the Indemnitee other than the payment pf money by the Indemnitor on its behalf without its consent;
補償対象者は、これらの第三者の請求や手続きに関する和解や示談であって、補償責任者が補償対象者に代わって支払いを行うという内容の金銭支払債務以外の義務を内容とするものについては、自身の同意なく行われた場合には一切の責任を負わない。
続く(c)項においては、勝訴の場合(特に補償責任者に帰責性が認められなかった場合)にも訴訟費用を請求できるかを明記することができますし、又、補償責任者の観点からは、補償対象者が主導する和解において全ての責任を押し付けられないように、自身の最低限の同意を条件とする事が考えられます。
(c) if the Indemnitor does not assume the defense of such third party claim or proceeding within 30 days after giving notice under Section7.2 (a) or does not thereafter conduct such defense, the Indemnitee may、at the Indemnitor’s cost, defend against such third party claim or proceeding in such manner as it may deem appropriate.; provided that the indemnitee may not settle or compromise any third party claim or proceeding without the consent of the Indemnitor, whose consent shall not be unreasonably withheld or delayed.
(c) 補償責任者が第三者による請求や手続きについて7.2条(a)の通知がされてから30日以内にそのような防御をする事を引き受けなかった場合、あるいは、防御を実際に行わなかった場合、補償対象者は、補償責任者の負担で、当該請求や手続きについて自ら適切と考える方法で防御をする事が出来る。但し、補償対象者は当該請求や手続において補償責任者の同意なく和解乃至示談を行ってはならないものとし、この場合、補償責任者は不合理に当該同意を留保したり遅らせたりしてはならない。