解説
「反社会的勢力排除条項」は、取引の相手方が反社会的勢力である事が発覚した場合にその関係を遮断するための条項です。我が国の全ての都道府県において暴力団排除条例が制定されている事実に鑑み、実質的な必須条項として、英文契約書にも含む必要性を海外との取引の際の相手方にも説明しなくてはなりません。
いわゆる「反社条項」は表明保証条項の一種と分類することができるもので、法務省の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(2007年6月)に基づき、暴力団の資金源を断つ趣旨のコンプライアンス強化或いは企業防衛を目的とした条項と言えます。
法務省の指針の別紙脚注に従えば
1. 法律要件に「反社会的勢力」を設定すること。
2. 法律効果に解除権の発生を設定すること。
が必要となり、前者については「反社会的勢力」の属性要件と行為要件の両者による明確な定義、設定が望まれます(彼等の関わる様々な「反社会的」行為、並びに彼等と何らかの取引関係を持つ組織や人物を一条項で広く絡めとる事を可能にする記述が大切になるでしょう)。
解除権の発生に関しては(無催告解除の適用の是非については意見を異にする向きもあるものの)、例えば、東京都の暴力団排除条例第18条2項1号においては、努力義務として無催告解除条項を契約条項として定めるべき旨が規定されており、契約書における特則としての明確な記述が望まれます。
契約当事者のいずれかを有利・不利とする趣を持った条項ではないため、定型的な条文とする際には、当事者双方に義務が課されているかどうか(公平性)の確認が主な留意点となるでしょう。
例文:必要最小限の内容を含む例文
At the time of execution of this Agreement, each Party represents and warrants to the other party that, it its parent company, and any of its subsidiaries, affiliates, directors, officers and employees are not crime syndicates, members of crime syndicate, crime syndicate-related companies or associations, corporate racketeer or any other antisocial forces (collectively, an “Antisocial Forces”) and that it, its parent company, and any of its subsidiaries, affiliates, directors and officers and employees are not and will not be involved in any actions or activities using, or jointly associated with, any Antisocial Forces.
【和訳】本契約の締結時において、各当事者は、自己の親会社及びその子会社、関連会社、取締役、役員および従業員が、犯罪組織とその構成員や関連企業または団体(これより「反社会的勢力」と総称する)ではないこと、及び、自社、その親会社及びその子会社、関連会社、役員及び従業員のいずれもが、反社会的勢力を利用した又は反社会的勢力と共に関与しての行為や活動に決して関わることなどない事を他方当事者に表明し、確証する。